戦え!アルカイザー

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救急外来バイトをしていて思うこと その2

その2です

 

ここでいう救急外来とは

日中の通常の外来が閉まっているときに患者対応を行う救急外来のことです

病院によっては

平日の日中でも初診の患者は基本的に全員救急外来で対応します、みたいなとこもあったりしますが

今回は時間外の救急外来について書きます

僕が救急外来バイトをしている、夜間もしくは休日の救急外来についてです

 

・どこまで時間外の救急外来でやるべきなのか

救急外来てのは文字通り救急対応をするための外来なので

細かい病気の診断をするところではありません

大雑把に言ってしまえば

「やばいかやばくないか」

を判断する場です

この「やばい」の基準は

「緊急性があるかどうか」

になります

 

急性心筋梗塞くも膜下出血、下部消化管穿孔、大動脈解離など

緊急で対応しないと死んでしまう可能性がある病気を見逃さない

てのが最優先事項です

緊急だし重症なものを確実に見つけて治療に繋げる

これが第一です

 

次は

重症ではないけど緊急対応が必要なものを治療する

ということです

例えば

転んで手足を切って、出血がなかなか止まらない

とか

アナフィラキシーとまではいかないけど、強めのアレルギー反応が出ている

とか

放っておいたらだいたい自然によくなるけど結構困るし早く良くしてほしい

みたいな状況

たぶんこれは

患者さん本人の自覚症状がはっきりしている状況が多いので

見落とすことはあまりないでしょう

それらに対応するのみです

 

で、緊急でもないし重症でもないものは

対症療法で十分です

そもそも救急外来に来る必要はありません

若くて元気な人の発熱とか打撲とか

家で休んでくれればいいし

どうしても病院を受診したいなら

平日日中に通常の外来を受診すればいいです

 

今回主に扱いたいのは

緊急ではないけど重症(かもしれない)

という状況についてです

こういう状態の患者に対して、救急外来でいろいろやりすぎなんじゃないか

という気がしています

例えば

1) めまいを主訴に来院された高齢者、採血や心電図、頭部CTでは特に異常なし

という状況に対し

救急でMRIまで撮ったりするみたいなんですが

そこまでする必要があるんでしょうか

めまいの原因の可能性として小脳梗塞が考えられ

それを完全に除外するためにはMRIが必要にはなるのですが

仮にMRIを撮ったとして何か救急対応は変わるんでしょうか

一応、発症直後の脳梗塞に関しては血栓溶解療法というものがあり

その適応に当てはまればすぐに治療介入したほうがいいのですが

この治療適応基準はかなり厳しく

(四肢の麻痺ではなく)めまいを主訴に来院した高齢者(血栓溶解療法には年齢制限もあるし、既往歴で適応除外になることもある)、という条件から鑑みるに

この人が適応基準を満たすことはまずないでしょう

小さな小脳梗塞があろうがなかろうが

めまいがよくなれば一旦帰宅して後日精査すればいいし

よくならなければ入院して精査すればいい

それだけだと思います

めまいに対するMRIは救急外来で行うことではないと思います

 

2) 発熱1日目の高齢者、全身状態良好で他に症状なし

こういう患者に会うこと結構あるんですが

どこまでやるもんでしょうか

僕が研修した病院では

高齢者の発熱は問答無用で

採血、血液培養2セット、尿検査、尿培養、尿のグラム染色検査(細菌や白血球などを顕微鏡で調べる検査)、喀痰培養、喀痰のグラム染色検査、心電図、胸部レントゲン

を全ておこなっていました

もちろん、研修としてルーチン化しているわけであって

全高齢者にこれをやるのが正しいとは思いません

こんな病気が隠れてることがあるのか、と驚くこともありましたが

こういう時にこんなんしても無駄だろと思うことも多々あり

研修医にそういう経験をさせるためのルールだと思っています

その経験で得たのは

結局、身体診察と全身状態が重要

ということです

採血して炎症反応があってもなくても

CTで所見があってもなくても

全身状態が悪ければ入院したほうがいいし

全身状態がよければ一旦帰宅して平日日中の外来で介入をおこなえばいい

翌日の外来を待つまでに急変する可能性はまずないでしょうし

万が一急に強い症状が出たら救急車を呼べばいいのです

熱以外無症状な状況で検査をしようにも

有効な検査を的確に行うのは難しく

方針が大きく変わる可能性は低いです

 

あんまり長くなるのもあれなのでこの辺にしますが

救急外来において

ベッドもマンパワーも医療費も限りがある中で

急ぎでない検査はしなくていいのです

そういうことを医者も患者も考えずに

とりあえず検査をして結果を説明するだけの救急外来を続けていれば

コンビニ受診は減らないだろうし

夜間対応する若手医師も力がつかないし

医療経済的にも負担がかかるし

あんまりよくないと思うのです

 

医者側も検査の必要性(の無さ)をちゃんと言葉で説明しなきゃいけないし

患者側もとりあえず検査してなんとなく安心したい、みたいなことは控えてもらいたい

と思いますが

まあいろいろむずかしいんでしょうね

 

終わります