戦え!アルカイザー

日々のこととか、医療のこととか、社会のこととか

離島医療の現実

僕は研修医時代を沖縄で過ごしたので

沖縄の離島診療事情について少し知識があります

とんでもなく時代遅れな狂ったシステムで成り立っていて

というか成り立たなくなってきている状態なので

そのへんについて書きたいと思います

 

沖縄本島石垣島宮古島には総合病院がありますが

離島については(例外はあるものの)基本的には1つの離島に1つの診療所、という体制になっています

各診療所は沖縄本島もしくは石垣島宮古島の県立病院に附属している形になっていて

診療所でカバーしきれない重症な患者さんはその親病院に搬送することになります

 

で、その診療所の多くは

本島の県立中部病院で研修を受けた若いドクターが常駐しています

大学卒業後、早ければ4-5年目で離島に赴任することになり

島民の健康を預かる形になります

数年で交代にはなるのですが

24時間365日、島内で急変があればすべてそのドクターが対応することになります

早朝でも深夜でも

高齢者でも小児でも妊婦でも

発熱でも腹痛でも交通事故でも

基本的にすべてです

 

専門的な治療を任されるわけではないので、初期対応がしっかりできるように県立中部病院でトレーニングするわけですが

それにしても負荷が重すぎると思いませんか?

働き方改革ってなに?という労働環境

 

加えて、県立中部病院のハードな研修も時代遅れになっており

入職を希望する医学生も減少傾向です

(だいぶ労働環境は改善されてるっぽいですが)

つまり、離島に赴任するドクターの候補も減っているということです

 

離島のドクターは県の職員という立場になるので

県の人事で動くことになります

(これも島によって例外ありです)

今までもずっと人員不足は言われており

県に泣き付かれて何年も離島医療を続けるドクターもいるようです

特に沖縄県出身の自治医科大学卒業生は憂き目をみることが多いみたいです

 

さてこの問題ですが

解決するには遠隔診療を進めるしかなくないですか?

何も無い離島に若手の医者をずっと縛りつけるなんて

時代に合わないだけでなく

ドクターを肉体的にも精神的にも追い詰めます

コンスタントに「何年も離島医療やりたいっす」ていう若手の医者を確保し続けるなんて不可能なんです

また、そんな若手が医療過誤を起こしたとして、全責任はその医者にあるのでしょうか?

そんな環境が待っていると知ったうえで、医学生を勧誘するのって人道的に間違ってませんか?

 

このままでは存続できないのは自明なんです

もっと早くから遠隔診療を導入すべきだったんです

すでにずいぶん遅いですが、今からでもやらないよりはマシでしょう

 

医者のリアルな診察なしで薬の処方ができるようにすれば

ビデオ通話で多くの内科疾患は対応可能でしょう

傷の手当てや骨折の固定などは

医者が遠隔で指示しながら行えばかなりの範囲で可能でしょう

本当に緊急で処置が必要になる場合は

手遅れになる可能性も高いということを島民に承知してもらわないといけないでしょう

これまでは診療所ドクターの善意で緊急対応がなされていたわけであって

離島に住み続けるということはそういったリスクを飲んでもらわないといけません

いずれは遠隔で縫合、挿管、胸腔ドレーン挿入などもできるようになるでしょうが

まあ時間はかかるでしょう

 

なんとかして離島に人員を確保しよう

ではなく

なんとかして離島にドクターを常駐させるのはやめさせよう

そのためにどうしたらいいかを考えよう

と議論すべきです

 

コロナ禍に乗じて遠隔診療、ゆくゆくは遠隔手術、自動手術が進めばいいなと思ってますが

具体的に僕はどう動いたらいいのかわからず

もやもやしています

 

終わります