戦え!アルカイザー

日々のこととか、医療のこととか、社会のこととか

小児外科という領域

外科の中でも特殊性の強い科だと思います

カバーする領域は小児全般

成人なら呼吸器や消化器など細分化されているのに

小児外科は小児の全身を診なければならないのです

(まあ心臓は心臓外科、脳は脳外科だったりしますがそれは置いといて)

そんなカバーする領域が広いにも関わらず、患者数は多くないです

食道閉鎖症や胆道拡張症、腸回転異常症などの「これぞ小児外科」って感じの手術は少ないです

そういう先天奇形的な病気は出生何千〜何万につき1人の確率とかで発症するのです

「胆道閉鎖症の手術は年に1例あるかどうか」という感じのこども病院も少なくないでしょう

 

一方、成人の外科で多いのはやはり癌の手術です

「日本の人口の何割は癌で死ぬ」とか言ってるので、小児外科とは桁違いです

今後は少子化の影響でさらに小児外科の患者数は減るでしょう

まあ高齢出産が増えて先天奇形の数がどうなるかはわかりませんが

 

昨今の医療はEBM(evidence based medicine)といって

多くの症例経験から「この病気にはこのタイミングでこの治療をするのがよさそうだ」というのを推測し

それを新たに個々の症例に適応する形で行われています

治療のガイドラインは多くの症例経験から出来上がっています

患者の多い消化器の癌には、毎年のように改訂されるかっちりとしたガイドラインが存在します

 

さて、小児外科の話ですが

小児外科のようにそもそもの患者数、症例数が少ないと

はっきり「これが最適な治療法」というのがわからないことがあります

EBMが行えないというか、適応しにくい領域なのです

 

じゃあどうすべきなのか

6月の記事でも似たようなことを書きましたが

小児外科では特にサイエンスではなくアートが重視されるべきだと思います

というか性質上そうならざるを得ないでしょう

症例数が少なく、データもあまり無いため、はっきりどうするのがいいかわからない

そんな時、患者が

「でもこの人(主治医)が言うならそれに従おう」

と思えるかどうか

そこが重要になってくると思います

 

僕の憧れた小児外科医は

手術も上手な人格者で、「この人が決めた治療方針なら大丈夫だろう」と思わせる人でした

大学医局には

臨床研究をやって、結果の出ないEBMにすがろうとしている人たちを多く見受けます

そしてそういう人は往々にして

患者との信頼関係の構築が下手くそです

 

EBMは必要だと思いますが、すべてではないはずです

ただガイドラインに従う治療ではなく

医者としての人間力や判断力、手術手技など

総合的な外科医の職人芸みたいなものが試される

そこが小児外科の魅力的な部分だと思っていたのに

なんか本当にうんざりなんです

 

すっぱり小児外科と縁を切るのがいいのでしょうか

一般外科ができるエンジニアになるほうが人生楽しめる気がします

終わります